養育費の強制執行の効力

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埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 養育費の強制執行の効力

 

(1)これから支払期限のくるものについても差し押さえることができる

 

 一般の債権は、支払い時期が到来するごとに、支払期限の過ぎた過去の不払い分についてのみ差し押さえしますが、養育費については、一回の差し押さえにより、これから支払期限のくるものについても差し押さえの効力が引き続きあります。 (慰謝料は過去の不払い分のみ差し押さえでき、これから支払期限のくるものについては差し押さえの効力がない)。 

 したがって、養育費については、一回の差し押さえにより、将来にわたって、元配偶者の給与から天引きで養育費を受け取れます。ただし、転職をした場合は、改めて差し押さえ手続きをする必要があります。

 

(2)給与の2分の1を差し押さえることができる

 

 一般の債権は、給与額から税金と社会保険料を差し引いた残額の4分の1が差し押さえ可能ですが、養育費については、給与額から税金と社会保険料を差し引いた残額の2分の1が差し押さえ可能です。2分の1が33万円を超えるときは33万円を除いた部分が差し押さえ可能です。(慰謝料の場合は、給与額から税金と社会保険料を差し引いた残額の4分の1が差し押さえ可能です)

 

 元配偶者が会社経営者であれば役員報酬を差し押さえることができます。 

 

2. 財産開示制度で元配偶者の財産関連の情報を入手

 

 強制執行で給料等を差し押さえる場合、まずは元配偶者の勤務先や口座の情報など「差し押さえる財産の情報を調査」する必要があります(元配偶者の給料等の口座を特定しないと差し押さえできません)。  

 

 従来の財産開示制度では、債務者が開示に協力しない場合、裁判所は元配偶者がどのような財産を持っているかは調査してくれず、「どこにある、どの財産」を差し押さえてほしいのか、給与を差し押さえるのであれば「勤務先」の情報、預金口座を差し押さえるのであれば「銀行名・支店名などの口座」の情報を自ら調査し、裁判所に伝える必要がありました。

 

 令和2年4月1日に改正民事執行法が施行され、養育費については、裁判所に申し立てれば、市町村や日本年金機構等(※)に情報提供を求めることができる制度ができ、元配偶者の勤務先情報、預貯金口座のある金融機関の支店名や不動産などの財産関連の情報を入手できるようになりました 。

 

※ 市町村や日本年金機構等は勤務先情報、預貯金口座のある金融機関の支店名や不動産などの財産関連の情報を有していることが多い。

 

3. 強制執行認諾文言付公正証書による強制執行と財産開示請求制度

 

 令和2年4月1日に改正民事執行法が施行され、改正前は、強制執行認諾文言付公正証書による強制執行の場合は財産開示請求制度を利用することはできませんでしたが、改正後は、利用することができるようになりました(民事執行法197条1項。改正前の同項では、公正証書は除かれていた)。法改正前に作成された公正証書であっても可能です。