□ 預貯金、有価証券・投資信託を複数の人が相続した場合、払い戻しや解約などを常にその相続人全員の名義でしなければならなくなります。遺言で相続人のうちの誰か一人を遺言執行者に指定しておくと便利です。
□ 預貯金を相続させる遺言があったときは、民法で、遺言執行者に預貯金の払い戻しや解約の権限が付与されていますが、有価証券・投資信託等、預貯金以外の金融資産については、遺言執行者に払い戻しや解約の権限は付与されていません。なお、遺言で、有価証券・投資信託等、預貯金以外の金融資産についても、遺言執行者に解約・払い戻しの権限を付与することができます。
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埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
関連情報
➤遺言執行者に預貯金以外の金融資産の解約権限を付与する
1. 遺言執行者の預貯金払い戻し・解約の権限
預貯金を相続させる遺言があったときは、遺言執行者に預貯金の払い戻しや解約の権限が付与されています(民法1014条)。なお、民法1014条3項は相続させる遺言についてのみ規定していますが、遺贈についても、遺言により、遺言執行者に預貯金の払い戻しや解約の権限を付与することは可能です。
2. 有価証券等預貯金以外の金融資産と遺言執行者の払い戻し・解約の権限
民法では、有価証券・投資信託等預貯金以外の金融資産については、遺言執行者に払い戻しや解約の権限は付与されていません。
その理由は、預貯金以外の金融資産には様々なものがあり、その払い戻しや解約の権限を預貯金と同様に一律に付与することは適当ではないからです。
例えば、有価証券・投資信託のように、解約時期によってその価額が大きく上下する可能性があるものについては、解約時期により受遺者に不利益が生じることもあり、一般的には、遺言者は、遺言執行者に解約・払い戻しの権限を付与し、解約権の行使時期をその判断にゆだねる意思までは有していないと思われるからです。
3. 遺言で預貯金以外の金融資産について遺言執行者に解約・払い戻しの権限を付与する
有価証券・投資信託等預貯金以外の金融資産についても、遺言で、遺言執行者に解約・払い戻しの権限を付与することは可能です。
(出典:日本行政書士会連合会『 月刊日本行政(2024.2)№.615』31頁)
民法1014条(特定財産に関する遺言の執行)
1.前三条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する。
2.遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。
3.前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。
4.前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
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