1. 相続時、実際に財産を分けられる
2. 遺産分割の余地を残さない
3. 遺留分は原則として侵害しない
4. 相続人間で「公平」
5. 必要な場合、遺言執行者を指定し、その権限を定めておきす。
行政書士は街の身近な法律家
埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
1. 相続時、実際に財産を分けられる
① 遺産の分割が不可能な場合(例えば、遺産が不動産が一か所のみで物理的に分けられない)や分割によって価値が著しく減少する場合は、代償分割(*1)もしくは換価分割(*2を)指示しておく必要があります。
また、土地などを共有にして持ち分で分ける「共有」の指示が適当な場合もあります。
遺言で「換価分割の指示」や「代償金分割の指示」を行うことによって、遺贈の実質的な効果を変えることなく、相続手続きの軽減や不動産の売却手続きの手間や費用を軽減することが期待できます。
*1 代償金分割:相続人の一人に相続財産を未分割のまま取得させ、他の相続人には不足分を代償金として金銭で支払うこと。
*2 換価分割:相続財産を未分割のまま売却して現金で分けること。
□ 詳しくは 》》 遺言による遺産分割の指定 をご覧ください。
② 「遺産分割の指定」は、実際に財産を分けられるよう、相続分の指定(あげる割合だけを指定)にとどめないで、「誰々に何々を相続させる」といったように、具体的に「遺産分割の実行」まで指定することをおすすめします。 (複数の相続人に対し「割合を定めて相続させる遺言(相続分の指定)」の場合、相続時に相続人同士で遺産分割協議を行い、誰がどの財産を取得するかを決める必要があります。)
③ 「相続人以外への包括遺贈」をする場合は、その遺贈分額を、誰が支払うか、その金額や支払方法を指示しておくことも必要です。
2. 遺産分割の余地を残さない
(1)相続させる旨の遺言と遺産分割協議の余地について
相続財産の全体について、各相続人に分数的割合により相続させる遺言は、相続分の指定をしたにすぎないとして、権利関係の確定のために遺産分割協議が必要になることがあります。
(2)財産の一部のみを相続させる遺言、遺言書に記載がない遺産がある場合
財産の一部のみを相続させる遺言を作成することはできますが、記載されていない財産をめぐって争いになることが多い、と言われます。
また、遺言書に記載がない遺産があると、未分割の遺産として、誰がどの財産を取得するか遺産分割協議を行う必要がでてきます。
3. 遺留分は原則として侵害しない
親が生きているうちはその重しで抑えられていた不満が、親が亡くなった途端に噴出し、きょうだい間の争いに発展した、というのはよくある話しです。
遺留分とは、遺言で遺贈した財産を、相続人が、法定相続分の一定の割合まで取り戻すことができる権利です。(遺留分侵害額に相当する金銭債権を生ずる。)
遺留分侵害額請求権は、一方的な意思表示だけで、遺留分侵害額に相当する金銭債権を生じさせる法的効力があるので、客観的にやむを得ないと思われる事情がある場合以外は、遺留分を侵害しない遺言を書く必要があります。
※民法改正により、遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権に変更され、遺留分減殺請求によって生ずる権利は金銭債権となりました。(遺留分減殺請求によって対象財産が共有状態になるとされていたものが、遺留分侵害額に相当する金銭債権を生ずることに改められた)
□ 詳しくは 》》 遺留分を侵害する遺言をするとき をご覧ください。
4. 相続人間で「公平」
「きょうだい間は平等に分けるのが当たり前、同居して少しくらい面倒を見たからといって相続分に差をつける必要はない」と本音では思っている人も結構いるようです。
また、子どもの間で相続分に差をつけると相続開始後感情的な対立が起こりがちともいわれています。
しかしながら、介護をするなどやさしく世話をした人に多めに遺産をあげることは不平等とは言えません。むしろ、真の公平というものであると考えます。また、祭祀主宰者に多めに遺産をあげることも不平等ではありません。
また、後妻の子は、後妻が夫から相続する財産をいずれ相続することを考慮すれば、先妻の子と後妻の子の相続分が実質的に平等となる遺言は合理的と言えます。
ただし、子の間で財産の分け方に差をつけるときは、「付言事項」に理由を書くなどして、子どもの心情に配慮しておくことが必要です。
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タマムシは背中に虹のようにメタリックな、緑と赤の縦じまが入っています。これは保護色で、天敵の鳥がキラキラする色を怖がる性質があるためともいわれています。
タマムシの色は見る角度により変わることから、どのようにも解釈できるものごとの例えを玉虫色といいます。外交交渉では玉虫色の解決も見られたりしますが、遺言では厳禁です。