遺 言 書
遺言者〇〇〇〇は、以下のとおり遺言する。
第1条 遺言者は、相続開始時に有する財産の全てを、妻〇〇〇〇(昭和△△年△月△日生)に相続させる。ただし、妻〇〇〇〇は自分が死亡したときは長男〇〇〇〇に下記不動産を移転させる負担を負うものとする。
記
(1) 土地
所在 〇〇市〇〇町〇〇丁目
地番 〇〇番〇〇
地目 宅地
地積 〇〇〇.〇〇平方メートル
(2) 建物
所在 〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番地〇〇
家屋番号 〇〇番〇〇
種類 居宅
構造 木造瓦葺二階建
床面積 一階 〇〇.〇〇平方メートル
二階 〇〇.〇〇平方メートル
第2条 万一、妻〇〇〇〇が遺言者より前に又は遺言者と同時に死亡しているときは、CD銀行の預金全てを長女〇〇〇〇(昭和△△年△月△日生)に相続させ、EF銀行の預金全てを次女〇〇〇〇(昭和△△年△月△日生)に相続させる。また、全不動産とAB銀行の預金を含むその他の金融機関の預貯金の全て及びその他の財産は、全て長男〇〇〇〇(昭和△△年△月△日生)に相続させる。
付言事項
私は、妻〇〇〇〇が平穏な生活をおくることできるようこの遺言をしました。長男〇〇〇〇、長女〇〇〇〇、次女〇〇〇〇は理解し、遺留分減殺請求はしないよう望みます。助け合って仲良く暮らしてください。
幸せな人生でした。ありがとう。
令和△△年△△月△△日
(遺言者住所)
遺言者 〇〇〇〇 印
ここが遺言(相続)のポイント
□ 「妻に全財産を相続させ、妻の死後、妻の世話をした子だけに財産をわたす」方法として、同様の効果が期待できるものを含め、次の4つがあります。
① 本文例のように、「負担付遺贈の形式による後継ぎ遺贈(*)」をする。
※ 「負担付遺贈の形式による後継ぎ遺贈」の遺言は、いつでも自由に取り消すことができます。もらう人も遺贈を放棄し義務を拒否することができます。
* 後継ぎ遺贈については、その有効性について確定判例がなく、また、批判的な見解が有力なところであるから、その効力が否定されるおそれがあることに留意されたい。(出典;NPO法人 遺言・相続リーガルネットワーク( 2017)『改訂 遺言条項例300&ケース別文例集』日本加除出版.168頁)
※ 仮に後継ぎ遺贈が民法上無効であるとしても、そのことは二次相続人が遺産分割を請求することができるということにとどまります。二次相続人が後継ぎ遺贈を承認すれば後継ぎ遺贈は有効です。
なお、紛議の余地をなくしたい場合は、遺言信託(後継遺贈型信託)をおすすめします。これにより、後継ぎ遺贈と同じ効果が期待できます。
② 遺言信託(後継遺贈型信託)
③ 家族信託(遺言代用信託)(始期付き信託)
④ 生前に、世話をする人と「負担付死因贈与契約」をを結ぶ。
※ 「負担付死因贈与契約」による方法は、合意に基づくものであり、履行される確実性が高いと言えます。
□ 民法改正により、改正前は、「相続させる」旨の遺言による不動産の贈与については、登記をしなくても第三者に対抗できるとされていましたが、改正後は、法定相続分を超える部分については登記をしなければ第三者に対抗できないこととなりました。
その結果、次のような問題が生ずる恐れがあります。
① 不動産を単独で相続させる旨の遺言をしても、他の相続人が自分の法定相続分相当持分を先に登記し善意の第三者に売却してしまうと第三者に対抗できなくなる。
② 他の相続人の債権者が、登記が未了の間に、他の相続人の法定相続分相当持分に対し債権者代位によって登記を行い仮差押えを行ってしまうと対抗できなくなる。
本文例はあくまでも一例です。遺言者のご希望はもとより、推定相続人や遺贈したい人の状況、相続財産の状況などによって遺言文は違ってきます。
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