□ 内縁関係(事実婚・夫婦別姓)の夫婦とは、婚姻届けを提出していないが、結婚する意志があり、共同生活をしている「事実上の夫婦」のことです。他に法律上の配偶者がいるいないは関係ありません。
※ 結婚する意志のない愛人関係は、内縁関係とは異なります。愛人への贈与は、一般に無効と考えられています。ただし、妻と20年間別居し、7年同居してきた愛人に同居中の建物と敷地だけを遺贈する遺言を有効とした判例があります。
遺 言 書
遺言者〇〇〇〇は、以下のとおり遺言する。
第1条 遺言者は、相続開始時に有する下記を含む財産の全てを、内縁の妻○○○○(昭和△△年△月△日生、(本籍、住所等))に遺贈する。
(1) 土地
所在 〇〇市〇〇町〇〇丁目
地番 〇〇番〇〇
地目 宅地
地積 〇〇〇.〇〇平方メートル
(2) 建物
所在 〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番地〇〇
家屋番号 〇〇番〇〇
種類 居宅
構造 木造瓦葺二階建
床面積 一階 〇〇.〇〇平方メートル
二階 〇〇.〇〇平方メートル
(3)上記家屋内の私名義の一切の什器、備品
(4)〇〇株式会社株式(〇〇証券〇〇支店に預託)△△万株
(5)十年利付国債(平成△△年△月発行)額面△△万円(〇〇証券〇〇支店保護預)
(6)投資信託〇〇ファンド(償還日平成△年△月△日)△万口(〇銀行〇支店預託)
(7)〇銀行〇支店に対する遺言者名義の定期預金(口座番号〇〇〇〇)△△△万円
第2条 遺言者は、長男○○○○(昭和△△年△月△日生)、長女○○○○(昭和△△年△月△日生)、次女○○○○(昭和△△年△月△日生)から遺留分侵害額請求があり、それを支払うべきときには、この遺言書の第1条、(7)(6)(5)(4)の財産の中から、この順序で支払うべきものとあらかじめ指示する。
第3条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として内縁の妻○○○○を指定する。
2 遺言執行者には、遺言者名義の預貯金の名義変更、払戻、解約など、この遺言の内容を実現するために必要な行為をする権限を与える。
付言事項
私は、内縁の妻○○○○が平穏な生活をおくることできるようこの遺言をしました。長男○○○、長女○○○○、次女○○○○には、父の思いをくみ取って、遺留分を放棄してくれることを望みます。
令和△△年△△月△△日
(遺言者住所)
遺言者 〇〇〇〇 ㊞
ここが遺言(相続)のポイント
□ 内縁関係(事実婚・夫婦別姓)の配偶者は相続人になれません。しかし、遺言で遺贈してもらえば自宅の名義はかえられます。(相続人から遺留分侵害額請求されるおそれはあります)
寄与分としてあげることをお考えかもしれませんが、寄与分が認められるのは相続人だけです。
□ 内縁関係の配偶者に遺言で遺贈する場合は、遺言の執行が円滑になされるよう、遺言執行者を指定するとともに、相続人の理解を得るため、付言事項を記載しておきます。
□ 遺贈は民法上、贈与の一形態とされていますが、財産の移転のきっかけが所有者の死亡であることから、税法では「贈与税」ではなく「相続税」の対象としています。
□ 遺言で、「相続人以外への包括遺贈」をする場合は、その遺贈分額を、誰が支払うか、その金額や支払方法を指示しておく必要があります。
□ 「相続人は きょうだい のみ」のケースで、内縁の妻に不動産を遺贈しようとする場合は注意が必要です。
仮に、きょうだい に借金がある場合、その債権者が不動産を差押え又は仮差押えを行い、債権回収を図る恐れがあります。
□ 内縁関係の配偶者は、配偶者と借家に住んでいたときは、借家権は承継できます。
□ 遺言で、身分関係のない者(内縁の妻等)を特定する場合は、氏名、生年月日、本籍、住所等で特定します。また、「相続させる」ではなく、「遺贈する」とします。
□ 内縁関係の配偶者を受取人にした生命保険に加入するには、法律上の配偶者がいないこと、ある程度の期間一緒に暮らしていることなどが条件とされているのが一般的です。
本文例はあくまでも一例です。遺言者のご希望はもとより、推定相続人や遺贈したい人の状況、相続財産の状況などによって遺言文は違ってきます。
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