◇ 認知症の人◇ 未成年者 ◇ 胎児◇ 海外に住んでいる相続人◇ 不在者◇ 行方不明者◇ 生死不明の不在者
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埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
関連情報
➤遺産分割協議書の作成に特別な手続等が必要な相続人
1. 認知症の人がいる
遺産分割協議の 内容を理解できる軽度の認知症であれば問題ありません。
判断能力がなく、遺産分割協議の 内容を理解できない場合は、家庭裁判所に、特別代理人ではなく、「成年後見人」の選任の申し立てを行い、後見人を含めて遺産分割協議を行います。
微妙な場合は医師の診断書を取り判断します。
認知症の相続人に後見人がいて、その後見人も相続人の場合は特別代理人を選任する必要があります。
(成年後見人選任の問題点)
① 成年後見人の選任には約2か月から6か月くらい時間がかかります。相続税の申告が必要で申告期限が迫っている場合は、とりあえず、遺産未分割で相続税の申告を行い、遺産分割後、更正の修正申告をします。
② 成年後見人は、遺産分割協議にとどまらず、財産の維持管理、「療養・看護、介護、生活面に必要な手配」を全てを、被後見人が亡くなるまで任せなくてはなりません。家族といえども、預貯金など財産には一切触れることができなくなります。子どもでも親名義の家は処分できなくなることがあります。
③ 成年後見人を選任した場合、被後見人の取得分が法定相続分を下回る遺産分割協議内容では家庭裁判所が認めません。
④ 成年後見人の報酬(月額1~5万円)が被後見人が亡くなるまでかかります。
事情によっては、数次相続で遺産分割協議することも選択肢となります。
2. 未成年者がいる
親権者が「法定代理人」となります。
ただし、親権者もまた相続人のときは「特別代理人」が必要です。家庭裁判所に特別代理人選任の申し立てを行い、特別代理人を含めて遺産分割協議を行います。
特別代理人選任の申し立ては、一般的には叔父、叔母、いとこなど適任の候補者をあげて申し立てを行います。
(未成年者の特別代理人選任申立書)
親権者が複数の未成年者を同時に代理することはできません。家庭裁判所に他の未成年者の特別代理人選任の申し立てを行う必要があります。
※ 2022年4月1日から、成人年齢は18歳に引き下げられました。
3. 胎児がいる
胎児は、万が一死産だった場合は遺産分割協議がやり直しになるので、通常出生まで待ちます。
胎児について判例の考え方は、「胎児の間は遺産分割できないが、生きて生まれたら、胎児の間に亡くなった被相続人の遺産を相続できる」としています。
無事生まれてきたら、裁判所に特別代理人選任申し立てを行います。その際には、遺産分割協議書(案)を同時に提出します。
胎児に法定相続分で遺産分割する場合、遺産分割協議書の相続人表記は、亡○○○○(被相続人)妻○○○○胎児
4. 海外に住んでいる相続人がいる
日本に住んでいない人は、印鑑登録証明書を取得できません。海外に住んでいる場合は、印鑑の代わりにサインをして、日本国大使館や領事館でサイン証明(署名証明)をもらってこれに代えることができます。
5. 行方不明の相続人がいる
行方不明は「相続人が不存在」には当たりません。行方不明の期間に応じ、不在者管理人の選任又は失踪宣告の申し立てを行います。
(1) 普通失踪の状態が7年未満
生きているという噂はあるが所在地の確認ができない場合で、失踪の状態が7年未満の場合は、生きているものとみなされます。
(不在者財産管理人選任申立書)
元の住所地の家庭裁判所に「不在者財産管理人を選任」してもらい、その参加を得て遺産分割協議を行うことができます。
(2) 生死不明の不在の状態が7年以上(*)
元の住所地の家庭裁判所に「失踪宣告の審判申し立て」を行うことができます。不在となった時から7年が経過した時点で死亡したものとみなされます。
① 失踪宣告が確定した日(行方不明の者が死亡したとみなされる日)が被相続人が死亡した日より前であるときは、行方不明の者は相続人ではないとみなされます。子(養子を含む)がいるときは子が代襲相続人として遺産分割協議に加わります。
② 失踪宣告が確定した日(行方不明の者が死亡したとみなされる日)が被相続人が死亡した日以後であるときは、代襲相続ではなく、数次相続として処理します。
* 戦争や船の遭難等の場合は、危難が去った後1年間(危難失踪)とされ、危難が去ったときに死亡したとみなされます。
詳しくは 》「行方不明の相続人」をご覧ください。
6. 相続権の存否が不確定の者がいる
訴訟を提起されるなどして相続人の地位が否定される可能性のある者の参加した協議は、結果的に相続人の地位が否定された場合は無効となります。
逆に、相続人の地位を取得する可能性のある者の参加しない協議も、結果的に相続人の地位が認められた場合は無効となります。
いずれの場合もやり直しが必要となります。
遺産分割協議が成立したのち認知が認められた場合は、その子が参加しなかった遺産分割協議は無効とはならず、価格による遺産分割請求のみが認められます。
遺産分割協議が成立したのち離婚の無効が認められ場合、その者が参加しなかった遺産分割協議の効力については争いがあります。
7. 服役中の相続人がいる
刑務所長の「在所証明書」「母印証明書」
8. 遺産分割前に相続財産を譲渡した相続人がいる
譲り受け者に遺産分割協議に参加させます。
9. 遺言による認知を受けた相続人がいる
認知を受けた相続人を遺産分割協議に参加させます。
10. 生活保護を受けている相続人がいる