遺産分割協議書条項例(被相続人の表記⦅冒頭書⦆、相続人の表記・肩書⦅署名欄⦆)

□ 利益相反関係と特別代理人の選任:利害が対立する行為については代理人となることができません。特別代理人の選任が必要です。

□ 特別代理人の資格:欠格事由等はありません。親族らの推薦する者の中から、利害関係の有無などを考慮し、家庭裁判所が選任します。 

□ 未成年者の子が複数いる場合の法定代理:未成年の子が複数いるときは、親権者が法定代理できるのは一人だけなので、残りの子各人にそれぞれに別人からなる特別代理人をつける必要があります。

 1. 被相続人の表記(冒頭書)

 

  遺産分割協議書の冒頭に「被相続人の氏名」「死亡年月日」「最後の住所」「最後の本籍」(※不動産登記の原因証書として使う場合)を必ず記載します。

 

 (被相続人の表記(肩書)文例)

   被相続人    〇〇〇〇(令和〇年〇月〇日 死亡)

  最後の住所   県〇〇市〇〇町〇丁目〇〇番地

    最後の本籍           〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇〇番地

 

(「最後の住民票の住所」と「不動産の全部事項証明書に記載されている住所」が一致しない場合 )

  最後の住所   〇丁目

  登記簿上の住所 丁目

 

2. 相続人の表記・肩書(署名欄)文例

 

  住所

  氏名  〇〇〇〇 (署名)   実印  

 

  住所

  氏名  〇〇〇〇 (署名)   実印

 

 遺産分割協議書は、相続人署名欄に、必ず、「作成年月日」「相続人全員の住所」(*1)を記載し、「氏名」を自署(*2)します。

 

 財産を何も取得しない相続人も含め、相続人全員が署名・捺印(又は記名・押印)する必要があります。(相続放棄した者を除く)

 

(*1) 遺産分割協議書を不動産登記の原因証書として使う場合は、相続人

 の住所の記載が必要です。住民票・印鑑証明書のとおりに記載します。

 

(*2) 氏名は自書でなくともよいとされていますが、証拠力の強い署名を

 お勧めします。

 

3. 特別な手続き等が必要な相続人の「相続人の表記・肩書(署名欄)」文例

 

(1)  認知症の方

 

ⅰ) 相続人に認知症の人がいる場合は、家庭裁判所に成年後見人選任を申し立て、特別代理人としてつける必要があります。

 

  住所

  氏名    〇〇〇〇 

  成年後見人

  住所

  氏名    〇〇〇〇 (署名)   実印 

  

ⅱ) 認知症の相続人に成年後見人がいるが、その後見人も共同相続人の場合は利益相反関係にあたるので、別途、特別代理人をつける必要があります。

 

  住所

  氏名   〇〇〇〇 

  特別代理人

  住所

  氏名   〇〇〇〇 (署名)   実印 

 

(2)  未成年者

 

ⅰ) 残る親権者が共同相続人の場合は、利益相反関係にあたるので、家庭裁判所に申し立て、特別代理人をつける必要があります。

 

  住所  

  氏名   〇〇〇〇 

  特別代理人

  住所

  氏名   〇〇〇〇 (署名)   実印

 

※ 2022年4月1日から、成人年齢は18歳に引き下げられました。

 

ⅱ) 残る親権者が相続放棄を行った、又は事実婚の場合などで利益相反関係に無いときは、残る親権者が法定代理人として署名・捺印(又は記名・押印)します。

 

  住所

  氏名   〇〇〇〇 

  法定代理人(親権者)

  住所

  氏名  〇〇〇〇 (署名)   実印

 

※ 未成年者の子が複数いるときは、親権者が法定代理できるのは一人だけなので、残りの子各人にそれぞれに別人からなる特別代理人をつける必要があります。

 

(3) 胎児のまま遺産分割する場合

 

  亡〇〇〇〇(被相続人氏名)妻〇〇〇〇胎児

 

※ 胎児については通常出生まで待ちます。

 

 胎児について判例の考え方は、「胎児の間は遺産分割できないが、生きて生まれたら、胎児の間に亡くなった被相続人の遺産を相続できる」としています。   

 

(4) 代襲相続人

 

  住所 

  氏名  〇〇〇〇 (署名)   実印 

  (被代襲者 〇〇〇〇)(※)

 

 直接共同相続人として署名・捺印(又は記名・押印)します。

(※)被代襲者(代襲相続のときは相続権を失う相続人) の記載は省略する場合もあります。

 

(5) 代襲相続人が「未成年者」の場合の「相続人の表記・肩書(署名欄)」

 

  住所  

  氏名   〇〇〇〇 

  (被代襲者 〇〇〇〇)(※)

  特別代理人

  住所 

  氏名   〇〇〇〇 (署名)   実印

 

(※)被代襲者(代襲相続のときは相続権を失う相続人) の記載は省略する場合もあります。

 

※ 2022年4月1日から、成人年齢は18歳に引き下げられました。 

 

(6) 上記のケースで、被代襲者の配偶者(が被相続人の養子(共同相続人)の場合の「相続人の表記・肩書(署名欄)」

 

  住所

  氏名  〇〇〇〇

  特別代理人 (※)

  住所 

  氏名  〇〇〇〇 (署名)   実印 

 

(※) 代襲相続人と孫のもう一方の親は利益相反関係にあたるので、家庭裁判所に申し立て、特別代理人をつける必要があります。

 

7) 養子

 

 上記2.相続人と同じです。直接共同相続人として署名・捺印(又は記名・押印)します。

 

(8) 養子が「未成年者」の場合

 

 上記(2) 未成年者と同じ。

 

(9)孫を養子にしていた場合で、孫が代襲相続人となったとき

 

  住所 

  相続人兼〇〇〇〇の代襲相続人 〇〇〇〇(署名) 実印  

 

※ 孫は子としての相続分と代襲相続分を合算して相続します。 

 

(10)上記のケースで孫が「未成年者」のとき 

 

  住所

  相続人兼〇〇〇〇の代襲相続人

  氏名  〇〇〇〇 

  法定代理人(親権者)※

  住所

  氏名  〇〇〇〇 (署名)   実印 

 

※ 非嫡出子の母親と被相続人が本人が出生した後に婚姻するなど、非嫡

 出子の母親が共同相続人の場合は、利益相反関係にあたるので、家庭裁

 判所に申し立て、特別代理人をつける必要があります。

 

(11) 非嫡出子

 

 上記2.相続人と同じです。直接共同相続人として署名・捺印(又は記名・押印)します。

 

(12) 非嫡出子が「未成年者」の場合 

 

 上記(2) 未成年者と同じです。

 

※ 非嫡出子の母親と被相続人が本人が出生した後に婚姻するなど、非嫡

 出子の母親が共同相続人の場合は、利益相反関係にあたるので、家庭裁

 判所に申し立て、特別代理人をつける必要があります。 

 

(13) 行方不明の相続人 ※ 行方不明は「相続人が不存在」には当たりません。

 

ⅰ) 普通失踪の状態が7年未満の場合

 

  住所

  氏名  〇〇〇〇 

  不在者財産管理人

  住所 

  氏名  〇〇〇〇 (署名)   実印

 

 生きているという噂はあるが所在地の確認ができない場合は共同相続人に含まれます。

 家庭裁判所に申し立て、「不在者財産管理人」をつける必要があります。  

 

ⅱ) 失踪宣告確定日より前(同日を除く)に被相続人が死亡

 

  住所

  氏名  〇〇〇〇 

  不在者財産管理人

  住所 

  氏名  〇〇〇〇 (署名)   実印

 

 共同相続人に含まれます。特別代理人として「不在者財産管理人」をつ

 ける必要があります。(上記のⅰ) 普通失踪の状態が7年未満の場合

 に同じ)

 

ⅲ) 被相続人死亡日以後(当日を含む)遺産分割終了前に失踪宣告が確定 

 

 被相続人が死亡した日以後(同日を含む)に、遺産分割が終わらないうちに失踪宣告が確定した場合は、代襲相続ではなく、数次相続として処理します。(数次相続の形式で遺産分割協議書を作成する) 

 

 》》数次相続の遺産分割協議書 をご覧ください。

 

ⅳ) 失踪宣告確定日以後(同日を含む)に被相続人が死亡

 

 行方不明の者は失踪宣告確定日に死亡したとみなされ、共同相続人に含まれません。 

 ただし、子(養子を含む)がいる場合は、代襲相続人となる子が、直接共同相続人として署名・捺印(又は記名・押印)します。

 

(14) 相続分の譲渡を受けた人(第三者) 

 

  住所 

  受遺人 〇〇〇〇(署名) 実印

 

 相続分の譲渡を受けた人(第三者)も署名・捺印(又は記名・押印)する必要があります。 

  

 

 数次相続の被相続人の表記(冒頭書)や相続人の表記・肩書(署名欄)文例については、

 

 》》数次相続の遺産分割協議書文例 をご覧ください。

 

 

 海外に住んでいる相続人 

 

 海外に住んでいる場合、印鑑証明は居住国の公証人からサイン証明をもらってこれに代えることができます。

 不動産登記では原則として綴り合わせタイプのサイン証明書が必要です。

 

 海外に住んでいる相続人が相続で不動産を取得する場合は、住民票に代わるものとして在留証明書が必要です。