遺産分割協議書条項例(代償分割⦅代償金分割⦆)

 1. 代償分割(代償金分割) 

 

 代償分割(代償金分割)とは、全財産を相続人の一人が取得することにして、他の相続人には代償金として金銭を支払う方法です。(代償金の支払いは協議で分割払いにすることもできます)

 

 代償分割(代償金分割)は、相続財産が居住する不動産や農地、あるいは事業用不動産の場合で、その取得希望者がいて共有で相続したくないときこの方法が適しています。 また、物理的に切り分けることによって価値が下がってしまう場合もこの方法を検討します。

 

 代償分割(代償金分割)は柔軟な分割をすることができますが、現物の取得希望者がいて、その人に代償金を支払う資力があることが必要です。

 

(代償金を分割前の相続財産から支払うことはできません)

 

 遺産分割前の相続財産から、承継債務として、代償分割(代償金分割)の代償金を支払うことはできません。

 なお、代償金を支払う者が、遺産分割協議が有効に成立したあとに、遺産分割で取得した財産の中から支払うことは、代償金を相続財産からで支払うことにはなりません

 

 代償分割(代償金分割)では「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を使うことができません。代償金受領者側の譲渡所得税に注意が必要です。

 

  代償分割(代償金分割)の条文は、①誰が、②誰に、③何の代償として、④いくらを(支払金額)、⑤どのように(支払方法)、⑥いつまでに(支払期限)支払うのか、⑦違反した場合の処置(ペナルティー)について記載します。

 

2. 不動産を「代償分割」で遺産分割する条項例

 

 1. 相続人Aは、次の不動産を取得する。  

 

  (1)土地             

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目

   地番    〇〇番〇〇 

   地目    宅地

   地積    〇〇〇.〇〇平方メートル

 

   (2)建物

   所在    〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番地〇〇 

   家屋番号  〇〇番〇〇 

   種類    居宅  

   構造    木造瓦葺二階建

   床面積   一階 〇〇.〇〇平方メートル   

         二階 〇〇.〇〇平方メートル    

 

 2. 相続人A(代償金支払義務者)は、前項の遺産を取得する代償とし

 て、B及びC(代償金取得権利者)に対し、令和〇〇月末日限り、

 各金〇〇万円をそれぞれの指定する預金口座に振込する方法により支

 払う。なお、振込手数料はA(代償金支払義務者)の負担とする。  

 

 相続人のうちの特定の一人が現物財産を取得し、他の相続人には、代わりに遺産分割額の不足分を代償金として金銭で支払うことができます。

 ただし、「遺産分割前の相続財産から、承継債務として代償金を支払うことはできません」。なお、代償金支払義務者が遺産分割協議が有効に成立した後に遺産分割で取得した財産の中から支払うことは、代償金を相続財産からで支払うことにはならず、問題ありません。 

 

3. 代償分割と相続税、譲渡所得税、贈与税

 

  代償分割は、遺産分割協議書に代償分割である旨を明記しておかないと、代償金の支払いを贈与であると指摘される恐れがあります(譲渡所得税、贈与税(※)が発生する。)。

 また、明記した場合も、代償金が時価を超える場合は、代償金の支払いを贈与であると指摘される恐れがあります(時価以下であれば、相続税のみ)。

 

(※)時価を超える部分(金額)に、相続税とは別に贈与税が課税されます。

 

(参考)

 遺産分割の方法には、

①相続人一人ひとりに、財産の形状や性質を変更することなく現物で分ける「現物分割」、

②相続財産を未分割のまま競売し現金化して分ける「換価分割」、

③不動産の場合にみられますが、相続人の一人が取得し他の相続人には不足分を代償金として金銭で支払う「代償金分割」、

④同じく、不動産の場合にみられますが、相続人の共有にして持分で分ける「共有分割」があります。