□ 遺留分は放棄することができます。ただし、相続開始前に放棄するには家庭裁判所の許可が必要です。なお、遺留分を放棄していても「相続放棄」したことにはならないことに注意。
行政書士は街の身近な法律家
埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
1. 相続開始前の遺留分の放棄
相続開始前(被相続人の生存中)の遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときのみ有効です。「本人が家庭裁判所に申し出て許可を得る」ことが必要です(1049条)。
裁判所は、放棄が本人の自由意志に基づくものか、その理由が客観的にみて合理性、必要性があるか、放棄と引き換えに代償が得られているか、などを審査して許可します。(一方、「相続放棄」は、相続開始前(被相続人の生存中)にはできません。)
2. 相続開始後の遺留分の放棄
相続開始後の遺留分の放棄はいつでもできます。家庭裁判所の許可を得ることなく有効となります。注意が必要です。
※ 遺産分割協議において、遺留分未満の財産の取得に同意した場合は、遺留分侵害額請求はできません。
3. 遺留分放棄の効果(相続放棄と遺留分放棄は別です)
(1) 相続開始前に遺留分を放棄していても、相続権は残ります、遺産分割で自分の相続を主張することができます。
※ 遺留分を放棄した者の相続分をゼロにするには、遺言で全財産を他の相続人等にあげることが必要です。
(2) 相続開始前に遺留分を放棄していても、相続開始後3か月以内に相続放棄または相続の限定承認をしなければ「相続の自然承認となり、負債を含め財産を引き継ぐ」ことになります。財産は何ももらえないのに「負債だけを法定相続分引き継ぐ」恐れがあります。相続開始前に遺留分を放棄したが、負債は引き継がないときは、相続開始後、3か月以内に「相続放棄」の手続きをすることが必要です。
(3) 相続開始前に遺留分を放棄させることによって、被相続人が自由に処分できる財産の範囲が広がります。ただし、遺留分放棄によって他の相続人の遺留分が増えることはありません。
民法1049条(遺留分の放棄)
1.相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。