□ 長男の嫁等、相続人には該当しない親族が、被相続人に対し無償の療養看護や労務の提供を行った場合は、相続開始時「特別寄与料」として、相続人に対し金銭を請求できるようにようになりました(民法改正30.7.13公布)
□ 特別寄与料は、親族間に争いが起きる恐れがあります。もめ事を回避するため、「遺言」に特別寄与料の定めを書いておくことが有効です。
ただし、遺言に特別寄与があったことや特別寄与料をあげると書いても、あくまで付言事項であり、法的拘束力はなく、相続人同士の協議における判断材料にとどまります。
特別寄与料を確実にあげたいのであれば、特別寄与を考慮した「遺贈」をする等が必要です。
民法改正(30.7.13公布)
「特別の寄与」の制度の創設(この部分は令和元年7月1日施行※改正法は原則として施行日以降に開始した相続に適用されます。)
現行では被相続人の息子の嫁等、相続人以外の親族が被相続人に対し無償の療養看護や労務の提供を行っても「寄与分」の請求はできませんでした(ただし、被相続人の息子が存命であれば、その寄与分として請求できた)。
民法改正により「特別の寄与」制度が設けられ、「特別寄与料」として金銭を請求できるようになりました。具体的には、戸籍上の親族(配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族(子の配偶者はこの中に含まれる))が介護してきたときなどが該当します。なお、遺産分割については現行と同じく相続人だけで行うことに変わりありません。
1. 特別寄与料制度
民法改正(30.7.13公布)により特別寄与料制度が創設され、被相続人の息子の嫁等、相続人以外の親族が被相続人に対し無償の療養看護や労務の提供を行った場合は「特別寄与料」として金銭を請求できるようになりました。
2. 特別寄与料を請求できる者
具体的には、戸籍上の親族(配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族(子の配偶者はこの中に含まれる))が介護してきたときなどが該当します。
3. 特別寄与料を請求できる要件
介護ノートなどの記録があること、被相続人の財産の維持又は増加に貢献していること。無償で労務の提供、療養看護を行っていたこと など。
4. 特別寄与料と遺産分割(特別寄与料の請求)
なお、遺産分割については、現行と同じく相続人だけで行うことに変わりなく、特別寄与料を請求する者は遺産分割協議には参加できません。
特別寄与料を請求するには、特別な手続きはなく、相応額を相続人に請求します。
なお、特別寄与料は相続税2割加算です。
特別寄与料の具体的な金額は特別寄与者と相続人との協議で決めます。
合意できなかったときは、家庭裁判所に調停を申し立て決めてもらうことができます。
家庭裁判所は、被相続人の身体の状態など介護が必要となった事情、病院や施設に通った頻度、介護した期間や方法など介護の状態、相続財産額など一切の事情を考慮して金額をきめます。
調停の申し立て期限は、相続開始を知った時から6か月以内か、相続開始から1年以内です。
5. 特別寄与料制度の問題点
「特別の寄与」制度が設けられ「特別寄与料」として金銭を請求できるようになりましたが、 特別寄与料の請求によって、財産の使い込みが問題にされもめたり、人間関係にしこりができたり、家族内がぎくしゃくするおそれもあります。
また、特別寄与料を相続人に申し出るのは心理的に負担があるほか、特別寄与料が認められるかどうかも不確実です。
遺言書に特別寄与料について記載しておくことも検討する必要がありそうです。なお、確実に財産をあげたいのであれば、遺言で寄与分を考慮した遺贈をすることをおすすめします。
6. 特別寄与料制度と遺言
特別寄与料は、親族間に争いが起きる恐れがあります。もめ事を回避するため、「遺言」に特別寄与料の定めを書いておくことが有効です。
ただし、遺言に特別寄与があったことや特別寄与料をあげると書いても、あくまで付言事項であり、法的拘束力はなく、相続人同士の協議における判断材料にとどまります。
特別寄与料を確実にあげたいのであれば、特別寄与を考慮した「遺贈」をする等が必要です。
① 遺言で特別寄与料相当額を「遺贈」する。
② 特別寄与料相当額の財産を 》死因贈与 する。
③ 特別寄与料相当額の財産を「生前贈与」する。
なお、この場合、相続人の遺留分を侵害しないよう注意する必要があります。