法定相続分と指定相続分

□ 相続人の相続分割合は民法に定められており、これを法定相続分といいます。一方、遺言で相続分割合を指定することができ、これを指定相続分といいます。指定相続分は法定相続分に優先します。

□ 遺言がない場合は法定相続分で分けます。ただし、相続人全員で一致すれば、法定相続分と違う割合で分けることができます(多数決ではありません)。

行政書士は街の身近な法律家

埼玉県行政書士会所属

行政書士渡辺事務所

行政書士・渡邉文雄

 

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1. 法定相続とは

 

 法定相続とは、遺言や遺産分割等によることなく、法定相続人となったこと自体に基づき、民法の規定にしたがって法定相続分に応じて不動産等を相続したことを言います。 

 

2. 法定相続分とは

 

 遺産を分けることを遺産分割といい、分ける割合を「相続分」といいます。

 相続人の相続分(相続分割合)は民法に定められており、民法の相続分割合を「法定相続分」 といいます。

 ただし、相続人全員で一致すれば、法定相続分と異なる割合で分けることができます(多数決ではありません)。

 

 

 3. 民法で定められた、各相続人の相続する割合(法定相続分)(民法900条・901条)

 

 民法で定められた、各相続人の相続する割合を「法定相続分」といいます。

 「法定相続分」になるのは、遺言がない②遺言はあるが「相続分(相続分割合)指定」がされていない、③遺言からもれている遺産がある、のいずれかです。 

 ただし、相続人全員の合意があれば、法定相続分の定めに拘束されません。自由に決めることができます。 

 

(1)配偶者 2分の1 、子 2分の1

 

※ 平成25年9月5日以後に開始した相続について、嫡出でない子の相続分も嫡出子と同等になりました。(平成13年7月から平成25年9月4日までの間に相続が開始した事案については・・・・・・・・・・。)

 

□ 詳しくは、 》非嫡出子の相続分 をご覧ください

 

(2)子がいない場合

 

□ 配偶者 3分の2 直系尊属 3分の1

 

(3)子も直系尊属もいない場合

 

□ 配偶者4分の3 兄弟姉妹 4分の1(兄弟姉妹が複数いるときは等分します。ただし、半血兄弟姉妹(異父または異母)は全血兄弟姉妹の2分の1となります。)

 

※ この相続分(相続分割合)は、子、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ二人以上いる場合は、子、直系尊属、兄弟姉妹それぞれの全員分です。

 

民法900条(法定相続分)

同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

①子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。

②配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。

③配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。

④子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

 

民法901条(代襲相続人の相続分)

1. 第887条第2項又は第3項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。

2. 前項の規定は、第889条第2項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。  

4. 続柄別 法定相続分

 

① あなたが被相続人の「子」の場合

被相続人に

法定相続分

配偶者がいる

/

配偶者がいない

すべて

 

② あなたが被相続人の「配偶者」の場合

被相続人に

法定相続分

子がいる

/

子がいないが父母がいる

/

子、父母がいないが「きょうだい」がいる

/

子、父母、「きょうだいがいない

すべて

 

③ あなたが被相続人の「父母」の場合

被相続人に

法定相続分

子がいる

なし

配偶者がいるが子がいない

/

 配偶者、子がいない

すべて

 

④ あなたが被相続人の「きょうだい」の場合

被相続人に

法定相続分

子がいる

なし

父母がいる

なし

配偶者がいるが、子、父母がいない

/

配偶者、子、父母がいない

すべて

 

5. 法定相続分の組合せ

       

 

配偶者

子ども

直系尊属

きょうだい

 

法定相続分の組合せ

2分の1

2分の1

なし

なし

3分の2

(いない)

3分の1

なし

4分の3

(いない)

(いない)

4分の1

全部

(いない)

(いない)

(いない)

(いない)

全部

なし

なし

(いない)

全部

(いない)

なし

(いない)

全部

なし

(いない)

(いない)

全部

(いない)

(いない)

(いない)

(いない)

全部

なし

(いない)

(いない)

全部

(いない)

(いない)

(いない)

(いない)

全部

 

6. 指定相続分とは

 

 遺言で相続分割合を指定することができます。これを「指定相続分」といいます。

 指定相続分は法定相続分に優先します。

 

 相続分の指定は通常、各相続人が相続すべき相続財産の割合(2分の1、3分の1など)を定めます。

 各相続人が相続すべき相続財産の種類(不動産、動産、株式など)を定めることも、包括して相続させる遺言等、それが相続財産全体に対する割合を指示していれば可能です。

 各相続人が相続すべき個々の特定の相続財産を定めることも、包括して相続させる遺言等、それが相続財産全体に対する割合を指示していれば可能です。相続分の指定、遺産分割方法の指定、遺贈のいずれにあたるかという問題が生じることがあります。

 

 遺言による指定相続分は法定相続分と同じでも変えても自由です。

 

 遺言による「相続分指定(相続分割合の指定)」があっても、相続人全員の合意があれば、これに拘束されません。自由に決めることができます。