人が亡くなったときは、親戚や友人・知人への連絡、市区町村役場等への届け出、医療費や介護施設等の利用料の清算、葬儀の手配、火葬、納骨、法要の施行、電気・ガス・水道や電話の名義変更、遺品の整理等多くの事務を処理しなければなりません。
□ 金融機関に連絡する場合は、先に故人のキャッシュカードで葬儀代などを引き出したあとで連絡します。
故人のキャッシュカードを使って、葬儀代などを引き出した場合は、相続人同士のトラブル防止のため、必ず使途の分かる領収書やメモを保管しておきます。
□ 「家族葬」で注意すべきこととして、葬儀の日時・場所を身内以外には知らせないことが肝要です。知らせる場合は、「故人の遺志によって一般関係者が弔問する告別式を行わない」旨伝えましょう(一般関係者が弔問する告別式を行わない葬儀のことを「身内葬」、「密葬」ともいいます)。
□ 相続税の納税準備は、葬儀が終わったらすぐ開始します。
□ 寡婦年金の請求をお忘れなく! 夫が年金をもらわずに亡くなったときは、妻は、60歳~65歳まで「寡婦年金」をもらうことができます。
□ 未支給年金は請求しなければもらえません。
□ 借地権を相続した場合は、相続により借地人の地位を承継するものであり、地主に名義書き換え料を支払う義務はありません。
□ 相続後、忘れがちなのが、被相続人の借金・連帯保証人の調査です。
1. 亡くなった後に発生する事務
(1)早急に処理しなければならないもの
■ 死亡診断書の依頼、「死亡届」(7日以内)・「死体火葬許可申請書」の提出
■ 親族・親戚、友人・知人、関係者への死亡の連絡
■ 遺言書の有無確認、有り→(公正証書以外は、家庭裁判所で検認)
■ 葬儀の準備・手配(お通夜、告別式、火葬等の手順や内容の指定)
それらの費用の支払い。
■ 行政官庁等への諸届け(健康保険の届け出等)
■ 加入団体への退会届出
■ 自動引落しの停止、携帯電話の解約、各種クレジットカード等の解約
■ 免許証・パスポート返納
■ 公共料金、家賃・地代の支払い
■ 債務の支払い
※ 相続開始後に発生した被相続人名義の料金は、相続人の連帯債務となります。
(2)死後、比較的短期間に処理しなければならないもの
■ 病院・施設への支払い(医療費・入院費、介護施設・老人ホーム等の福祉施設利用料)、施設入居時預け金返還金の受領
■ 生命保険の届け出(死後いつでもできるが、2年又は3年の消滅時効がある)
■ 遺産リストの作成
■ 不要な家財道具・生活用品の処分とその費用の支払い
■ 個人情報の処理(パソコン・携帯電話のデータ消去 、メール・ホームページ・ブログの閉鎖)
■ NTT 加入等承継改称届出書(被相続人及び相続人の戸籍謄本)
■ インターネットプロバイダー(ISP)の解約 → 電話で申し込み書類を請求する。
■ ネット銀行口座の解約
■ ネット有料サービス(サブスクリプション)解約
■ LINE、Facebook、TwitterなどSNS解約(アカウント削除)
■ ケーブルテレビの解約
■ Suica等IC型チャージ式電子マネーの払い戻し
■ LINEPay等QRコード式電子マネーの払い戻し
(3)処理に比較的時間がかかるもの
■ 相続税の納税準備は、葬儀が終わったらすぐ開始します。
■ 賃貸住宅の解約返還手続き
■ 菩提寺の選定、お墓の準備(納骨、埋葬、墓石建立等)、年忌法要、永代供養の依頼とそれらの費用の支払い
■ 相続財産管理人の選任申し立て
2. 相続後の名義変更・払い戻し
(1) 預貯金について
①「預貯金」の引き出し
遺産分割協議が全部終わらなくても、預貯金だけ遺産分割が済んでいればできます。
□ 》預貯金の名義変更の仕方 をご覧ください
実務上、銀行が預金者の死亡を知った時点で預貯金の引き出しはできなくします。したがって、葬儀等で必要なお金は、キャシュカードで引き出すのはやむを得ないことです。なお、後でもめないよう、引き出したお金の使途をメモしておきます。
預貯金の引き出しは、相続財産を処分したこととなり、相続を単純承認したものとみなされます。その後、相続放棄はできません。
民法改正(H30.7.13公布)により預貯金の払戻し制度の創設されました。これまでは、遺産分割協議が調わなければ預貯金を引き出すことはできませんでしたが、「預金の仮払制度」が創設され、遺産分割前でも、一定額に限り、相続人が単独で払い戻せるようになりました。払い戻せる金額は、預貯金額×1/3×法定相続分(金融機関ごと、上限150万円)(施行は令和元年7月1日※相続開始が施行日前であっても適用されます。)
(2) 「生命保険・損害保険」
① 生命保険金請求(3年以内)に必要な書類
保険金請求書(保険会社所定)、保険証券、死亡診断書(死体検案書)、被相続人の住民票及び戸籍謄本、保険金受取人の戸籍謄本、印鑑証明書
(死亡原因が災害・事故による場合)災害事故証明書、交通事故証明書など。
請求から2週間~1か月程度で支払われます。なお、請求しなければ支払われません。
② 「生命保険」の名義変更
被保険者ではない保険契約者が亡くなった場合は、権利承継者の名義に変更することが必要です。保険会社などに連絡します。
必要書類は、①名義変更請求書 ②保険証券 ③被相続人の戸籍謄本(出生から死亡)④相続人の印鑑証明書
③ 「損害保険」の名義変更
保険会社などに連絡します。 必要書類は、①権利承継承認請求書(損害保険)②保険証券③被相続人の戸籍謄本(出生から死亡)④相続人の印鑑証明書
(3) 「株式・債券」の名義変更
「株券」を相続した場合、①証券会社の取引口座の名義変更と②株式発行会社の株主名簿の書き換えが必要です。証券会社・証券代行信託銀行に連絡します。
必要書類は、①株式名義書き換え申請書②遺産分割協議書③相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書④被相続人の戸籍謄本(出生から死亡)
遺言による場合の必要書類は、①株式名義書き換え申請書②遺言書の写し③相続人全員の戸籍謄本 ③被相続人の戸籍謄本(出生から死亡)④遺言執行者の資格証明書・印鑑証明書など
(4)銀行ローン等の名義変更
銀行ローン等の債務者を承継した場合、金融機関で名義変更が必要です
必要書類は、①債務者変更申込書②被相続人の戸籍謄本(出生から死亡)③相続人全員の戸籍謄本④相続人全員の印鑑証明書⑤遺産分割協議書
(5)借地権・借家権」の名義変更
貸主に申し出て契約書の名義を変更します。借地権を相続した場合は、相続により借地人の地位を承継するものであり、地主に名義書き換え料を支払う義務はありません。
(6) 「自動車」の名義変更 陸運支局事務所
□ 》自動車の名義変更の仕方 をご覧ください
(7) 「土地・建物」の名義変更
□ 》不動産の名義変更(登記)の仕方 をご覧ください
3. 遺族年金等の請求手続き
(1) 遺族厚生年金の請求手続き
下記の方が亡くなった場合、その遺族は遺族厚生年金を受けることができます。
①厚生年金の被保険者 ②老齢厚生年金を受けている人 ③厚生年金の受給資格期間を満たした人 ④被保険者期間中に初診日がある傷病で初診日から5年以内に亡くなった人 ⑤1、2級の障害厚生年金を受けられる人
下記の手続き先に、裁定請求書を提出します
■ 年金受給者が亡くなった場合は住所地の管轄の年金事務所
■ 年金受給資格者が年金受給前に亡くなった場合は
①最後に加入していた制度が厚生年金の場合には、勤務先を管轄の年金事務所
②最後に加入していた制度が国民年金の場合には、住所地を管轄の年金事務所
(2)遺族基礎年金の請求手続き
60歳以上65歳未満で国民年金のみに加入していた人が亡くなった場合、その妻か子は、一定の要件を満たしているときは、遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一時金のいずれかの給付を受けることができます。
遺族基礎年金の請求手続きは、住所地の市区町村に裁定請求書を提出します。
(3)寡婦年金の請求手続き
国民年金の1号被保険者である夫が亡くなった場合で、18歳未満の子がいないとき、60歳から65歳まで支給されます。額は4分の3相当額です。
寡婦年金の請求手続きは、住所地の市区町村に裁定請求書を提出します。
(4)死亡一時金の請求手続き
国民年金の1号被保険者として保険料納付月数が3年以上ある人が、老齢基礎年金、障害基礎年金のいずれも受けずに亡くなったときは死亡一時金が支給されます。
死亡一時金の請求手続きは、住所地の市区町村に裁定請求書を提出します。