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埼玉県行政書士会所属
行政書士渡辺事務所
行政書士・渡邉文雄
1. 被相続人の債務の承継、相続人同士の内部関係
被相続人の債務は、相続の開始と同時に、法定相続分に応じて各相続人に承継されます(最判昭和34年6月19日)。建物引き渡し義務のように不可分の債務については、どの相続人も履行する義務を負うことになります。
共同相続人同士の内部関係では、債務は、各共同相続人が、現実に取得したプラスの相続分(贈与、遺贈、遺産の分配を含む。特別受益、寄与分は無関係として除く(多数説))に応じて承継します。
具体的にどの債務(不可分の債務)を相続人の誰がどれだけ引き継ぐかは、「遺産分割の協議」で決めます。
なお、特定遺贈受遺者は債務を承継しません。
民法899条(共同相続の効力)
各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
2. 被相続人の債務の承継、対債権者の関係(債権者の請求権)
被相続人の債務は、対債権者との関係では、相続人が法定相続分に応じて承継します。
債権者は、遺産分割の結果、相続人(債務の承継者)となった者に支払い能力がないと思ったときは、他の相続人に法定相続分に応じて請求することができます。
債権者からの請求により、自らの法定相続分に応じて払った相続人は、現実に取得した相続利益に応じた負担を超える部分については、他の相続人に求償権を行使できます。
3. 相続債権者は、法定相続分に応じて請求した後になってから、指定された相続分に応じた債務の承継を承認することはできるか
相続債権者が指定された相続分(遺言による相続分の指定)に応じた債務の承継を承認することができる時期等について特段の制限はないため、相続債権者は、法定相続分に応じて請求したのちであっても、指定された相続分に応じた債務の承継を承認することができることになります。(出典:日本行政書士会連合会『月刊日本行政(2024.11) №.624』. 38頁)
民法902条(遺言による相続分の指定)
1. 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。
2. 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。
民法902条の2(相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使)
被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。
民法900条(法定相続分)
1. 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
(1)子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。
(2)配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。
(3)配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。
(4)子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。
民法901条(代襲相続人の相続分)
1. 第887条第2項又は第3項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。
2. 前項の規定は、第889条第2項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。