□ 財産分与、養育費、慰謝料を金銭で支払う場合は、払う方、受け取る方の双方とも税金はかかりません。
■ 不動産や株券など現物での財産分与は、入手時より評価額が上がっていると、増加分について、譲渡する側(所有名義人)に譲渡所得課税(値上がりによる増加益に対する税)があります。
■ 婚姻期間20年以上であれば、離婚前に配偶者に家を贈与すれば、「贈与税」は、2,110万円までかかりません。
1. 受け取る側に課税される税金
(1)離婚に伴う財産分与、養育費、慰謝料などと「贈与税」「所得税」
離婚に伴う財産分与、養育費、慰謝料などを金銭で受け取る場合は、社会的に見て妥当な額であれば(※1)「贈与税」も「所得税」も課税されません(ただし、給付原因別に贈与税及び所得税の非課税の根拠は異なります(※下記(2))。
(※1)「その分与に係る財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮してもなお過当であると認められる場合における当該過当である部分・・・の価額は、贈与によって取得した財産となる」(相続税法基本通達9-8)
・・・離婚を手段として・・税の逋脱を図ると認められる場合には、・・・贈与があったものとみなされます。(安達敏男・吉川樹士(2017)『第2版 一人でつくれる契約書・内容証明の文例集』日本加除出版.300頁)
(2) 給付原因別の非課税の根拠
① 慰謝料
離婚の際に受け取る慰謝料は、損害賠償として支払われるものであり贈与ではありません。損害賠償は、社会的に見て妥当な額である限り、非課税所得とされています(所得税法9条1項17号)。
ただし、慰謝料として不動産の分与を受けた場合は、「不動産取得税(地方税)」が、受け取る側に課税されます。
「不動産」を取得した者が所有権移転登記をするに際し、「登録免許税(不動産価格の2%)」が課税されます。
② 贈与税の配偶者控除
婚姻期間が満20年以上であれば、離婚前に配偶者に家(居住用不動産)を贈与すれば、「贈与税」は、2,110万円までかかりません(居住用不動産を取得するための金銭の贈与も同じです)。
贈与税の配偶者控除を受けるためには、(控除の結果、贈与税がかからなくなる場合でも)贈与税の申告をする必要があります。
③ 養育費
養育費については、子に対する扶養義務の履行として支払うものであり、贈与されたものではありません。したがって、社会的に見て妥当な額である限り、贈与税は課税されません。
ただし、将来分まで一括して支払いを受けた場合は、贈与税が課税される恐れがあります。
詳しくは、》》養育費ー10. 養育費と税 をご覧ください。
④ 財産分与
ⅰ) 精算的財産分与(共有物の分割)
精算的財産分与については、夫婦の実質的共有財産を含む共有財産の清算としてなされるものであり、財産分与義務の履行であって贈与ではありませんので、社会的に見て妥当な額である限り、贈与税は課税されません。
不動産等、金銭以外の資産で給付する場合も同様です。
ⅱ) 慰謝料的財産分与
財産分与には、慰謝料的要素が含まれる場合があります。慰謝料的財産分与については、上記(1)慰謝料 と同様です。
ⅲ) 扶養的財産分与
財産分与には、扶養的要素が含まれる場合があります。扶養的財産分与については、経済的弱者に対する離婚後の生活支援としての性格を有し、贈与ではありませんので、社会的に見て妥当な額である限り、贈与税は課税されません。
ⅳ) 解決金的財産分与
財産分与には、解決金的要素が含まれる場合がありますが、社会的に見て妥当な額である限りは贈与とはならないと考えられています(出典:第一東京弁護士会人権擁護委員会[編](2016)『離婚を巡る相談100問10答 第二次改定版』ぎょうせい.201頁)。
2. 支払う側に課税される税金
財産分与、養育費、慰謝料などを金銭で支払う場合は課税されるものはありませんが、不動産や株券などの現物の財産分与や給付は、税法上売却と見做され、購入時より評価額が上がっていると、増加分について、譲渡する側(所有名義人)に「譲渡所得税」(値上がりによる増加益に対する税)が課税されます。購入時期の古い不動産は注意が必要です。
詳しくは、》》財産分与に伴う譲渡所得課税 をご覧ください。