遺産分割協議書（冒頭書き・前文、後文・相続人署名欄）の書き方

※　不動産の相続登記を行う際には、被相続人の最終住所（住民票）が不動産の全部事項証明書の住所と一致している必要があります。不動産の所在地については、登記記録と一致しているかを必ず確認してください。一致していない場合、登記を行う際には、遺産分割協議書を改めて作成する必要が生じることがあります（これには再び全相続人の署名と実印の押印が必要です）。

（「最後の住民票の住所」と「不動産の全部事項証明書に記載されている住所」が一致しない場合）

　　相続登記を行う際、故人の最終住所が記載された住民票と不動産の全部事項証明書に記載されている住所が一致しない場合は、遺産分割協議書に特定の文言を追記する必要が生じます。

　　最後の住所　　　〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇〇番〇

　　登記簿上の住所　〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇〇番〇　　

なお、上記不動産につき、被相続人の最後の住所は○○○○で登記上の住所は○○○○ですが、住民票の除票や戸籍の附票を取得しても一致を確認できませんでした。しかしながら、上記不動産は被相続人の所有に相違なく、これにつき何か問題がおきましても相続人全員で責任を負うことを申述いたします。　　

(2)　後文・署名欄の文例

　以上のとおり、遺産分割協議が成立したので、これを証するため本協議書を３通作成し、署名捺印の上、各自１通ずつを保管する。

　令和〇〇年〇〇月〇〇日

　　住所

　　氏名　　〇〇〇〇　（署名）　　　実印　　

　　住所

　　氏名　　〇〇〇〇　（署名）　　　実印　　

　　住所

　　氏名　　〇〇〇〇　（署名）　　　実印

遺産分割協議書は、相続人署名欄に、必ず、「作成年月日」、「相続人全員の住所」（＊1）を記載し、「氏名」を自署（＊２）します。

　財産を何も取得しない相続人も含め、相続人全員が署名・捺印（又は記名・押印）する必要があります。（相続放棄した者を除く）

（＊1）　遺産分割協議書を不動産登記の原因証書として使う場合は、相続人

　の住所の記載が必要です。住民票・印鑑証明書のとおりに記載します。

（＊2）　氏名は自書でなくともよいとされていますが、証拠力の強い署名を

　お勧めします。

(3)　「相続人全員で協議し合意した」という趣旨の文言について

　　遺産分割協議書には、将来の紛争を防ぐために、「相続人全員が協議して合意に至った」という内容の文言を前文（序文）または後文（結語）に必ず含めることをお勧めします。

(4)　遺言書と異なる内容の遺産分割協議書を作成する場合の文言について

　　遺言書と内容が異なる遺産分割協議書を作成する際には、将来的な紛争を防ぐため、遺言の存在に関わらず異なる遺産分割を行う旨を文書に明記します。

なお、被相続人〇〇〇〇は、令和○○年○○月○○日付け自筆証書遺言を残しているが、同遺言の内容と異なる相続財産の分割をすることについて、同人の相続人全員が合意した。　

2.　「取得する」と「相続させる」の違いについて

　　遺言において遺産分割の方法を指定する際、「○○○○○○（特定の不動産）を○○○○（特定の相続人）に相続させる」と記述することで、判例に基づき、相続開始と同時に物権的な承継効果が発生します。（この場合、不動産を受け継ぐ相続人は、登記を行わずとも第三者に対して権利を主張できます）

　　一方で、遺産分割協議書においては、遺言で指定された遺産分割方法とは異なり、「相続する」と記載しても、直ちに物権的な承継効果を生じさせることはできません。そのため、「取得する」という表現がより明確だと考えられます。

3.　「合意した」と「決定した」

　　遺産分割協議書は遺産分割に関し全相続人で合意した内容を確認するために作成する書類です。確認事項は「決定した」ではなく、「合意した」と表現することをお勧めします。

被相続人○○○○の遺産について、相続人全員（後記相続人署名欄記載のとおり）で遺産分割協議をした結果、本日、下記のとおり分割し取得することに合意した。　

4.　印鑑について

（1）実印にすべきか認印でもよいか

　　遺産分割協議書を不動産登記の原因証書として、または預貯金や有価証券の名義変更に使用する際には、「実印」の押印が必要です。

（2）捨て印について

　　署名の後に実印を二箇所に押すことを推奨します。二つの押印のうち一つは捨印として使用します。これは誤字や脱字などの小さな修正に備え、遺産分割協議書を再作成する手間を省くためです。ただし、捨印がなくても遺産分割協議書の法的効力には影響しません。

（3）契印

　　遺産分割協議書が複数ページにわたる場合は、長辺をホッチキスまたは糊で綴じ、見開き状態で中心線上に、ページが重なるように実印で「契印」を押印します。

　　契印はページの連続性を示すための印で、あとでページが増やされたり、抜き取りや差し替えをされないようにするためのものです。すべてのページに契印があれば、仮にページが抜き取られても、見開きの契印の位置がずれていればすぐにわかります。また、仮にあとでページが増やされたり、ページの差し替えがあったりしても、契印が押されていないとすぐにわかります。

　　なお、契印は、遺産分割協議書に署名・押印した相続人全員が、署名欄に押印したものと同じ印章で押印する必要があります。

　　契印はなくても遺産分割協議書の法的効力には影響しません。

（4）割印

　　割印は、遺産分割協議書を2通以上作る場合に、それぞれが同一のものであることを証明するため、遺産分割協議書の上部（又は横）の余白に押印します。

　　割印押印の方法は、遺産分割協議書を上下（又は左右）に少しずらして重ね、印鑑が両方にまたがる形で押印します。また、3通以上作る場合は、全ての遺産分割協議書がつながるように、2通ずつ、押印します。

　　なお、割印は、遺産分割協議書に署名・押印した相続人全員が、署名欄に押印したものと同じ印章で押印する必要があります。

　　割印はなくても遺産分割協議書の法的効力には影響しません。

（5）印鑑登録証明書を添付しておく

　　相続登記を行う際には、印鑑証明書が必要となります。また、遺産分割協議書には、各通に印鑑登録証明書を添付することを推奨します。

5.　その他、書き方の注意点

(1) 　遺産分割協議書を手書きで作成する必要はありません。ワープロを使用して作成することができます。

(2)　財産の価格を表記する際は、改ざん防止のために漢数字（大字(だいじ））の使用を推奨します。